ヤサブロバサと魔女

新潟県には、ヤサブロバサという妖怪がいます。
山姥、鬼女と呼ばれている存在と同様に、恐ろしい形相をしている老婆で、それらと違うのは「吹雪(あるいは暴風)に乗って飛行する」ということです。



「魔女の秘密展」という展覧会場において、西洋の魔女についての展示やお話を伺い、多少なりとも共通点があるものだなぁ…と感心しました。

まず、小林繁子さんから伺ったお話。魔女の悪さの中の「天候魔術」と「幼児殺害・食人」このあたりは(その意味がどうなのかは置いておいて)ヤサブロバサともリンクします。男性機能を盗んで、木の上の鳥の巣の中に隠す、という逸話もヤサブロバサが悪行を重ねた人を婆杉に引っかける、という話を思わせました。

鏡リュウジさんのお話も興味深いものでした。キリスト教以前の考え方、大地そのものが女神だったり、神は森の王だったり…。そして自分たちもその一部であると。能生の山姥などは、山姥は山の精霊そのものであるような感じですから、鏡さんの自然イメージと結びつきます。そして、魔女は傍らにファミリアである猫を置くことによって、霊力が深まっていく…というようなお話。ヤサブロバサのまわりには、猫だったり、狼だったりしますが、そういった動物たちが身の周りにいました。

魔女には恐ろしい魔女と、人の役に立つ魔女がいるようですが、ヤサブロバサにも二面性があります。「ヤサブロバサは魔女の流れをくむか?」という考察をしても面白いかもしれませんね。

ただ、あまり人の役に立つほうの山姥・鬼女は知られていませんから、その共通点に気付く方も少ないかもしれませんね。親しまれているのは斎藤隆介さんの創作童話、「花さき山」くらいでしょうか。
現在、ヤサブロバサが「妙多羅天女」として祀られている寶光院に行きますと、妙多羅天女さまの綿が、子どもの咳をとめるために頒布されています。ヤサブロバサ、天女さまになってからは、子どもたちを見守る存在になりました。

かつて、追いかけていたヤサブロバサについて、弥彦郷土誌に発表した原稿を載せてみました。

高橋郁丸
 




「悲しみの天女ヤサブロバサ」弥彦郷土誌19 平成16年








ヤサブロバサをめぐる一考察

守門の弥三郎ばさ 2007.12

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