「妖怪は文化だ!」を考える

                   高橋 郁丸

 常々「妖怪は文化だ!」と宣言しておりますが、これはご当地の妖怪を語ることは、新潟の文化を語ることだという意味です。そこで、地域の方々がどのくらいご当地妖怪に愛着を持っているのか知りたくなり、アンケートを取ってみました。県内の二〇市町村に加え、合併前の百十二市町村が区として残っているところにもなるべくアンケートをお願いしました。結果、アンケートをメールでお送りしたのは七十七カ所、うち二十通のお返事をいただきました。

 県外には妖怪を町おこしの起爆剤として売り出している地域はたくさんありますが、新潟では、なかなか妖怪が文化として市民権をえられているわけではないようで、回答が半分以下という結果に、妖怪研究所の活動はまだまだと反省しきりでありました。

     回答を見てみますと、地元に言い伝えがあることをご存じの所は六割です。拙著「新潟の妖怪」では、「新潟県妖怪地図」という項目があり、百十二市町村一妖怪の地図を作りました。それも地区内の伝説から選抜でしたから、いたるところに妖怪伝説はあるわけです。六割の認知度でも、2や3の回答は、その伝承を地域の顔として使うことに躊躇しているようです。

 妖怪は地域の文化ではなく恥部なのでしょうか。

このままでは妖怪も、妖怪を取り巻く他の文化も消滅かと心配してしまいますが、4・ 5を拝見すると、後世に伝えるべきものであることに否定する方がいらっしゃらなかったのが将来へつなぐ希望を感じられました。

アンケートの後半部分では、地域のイチ押し妖怪を聞いてみました。

代表的なところで、

新潟市北区では福島潟の予言獣である「亀女」、

長岡市和島「桑原家の河童伝説」、

長岡市寺泊「八百比丘尼」、

小千谷市「真人むじな」、

加茂市「ばれおん地蔵」、

燕市「酒呑童子」、

糸魚川市「上路の山姥」、

五泉市「慈光寺の天狗と大蛇伝説」、

関川村「大里峠伝説」、

聖籠町「大眼」。

  妖怪を活用している例としては、

新潟市南区で「白根子行列」「タヌキの婿入り」、

燕市「酒呑童子行列」、

糸魚川市「上路の山姥(上路山村振興センター・山姥の里)、市指定文化財「上路山姥の伝説地」6点、山姥にちなんだ菓子の開発[地元小学生 と製菓業コラボ]」、

関川村「大したもん蛇まつり」等でした。

  加茂市からは、二十年ほど前に加茂市商工会で作成した加茂と田上の伝説地図を提供いただきました。地元の方が伝説を文化ととらえて子どもたちに紹介しようとした、素晴らしい例だと思いますので紹介させていただきます。

   以前、新潟妖怪研究所でも伝説樹木マップを作製したことがありますが、伝説があったということが伝えられないと、そんな話もなかったということになり、いつしか何もないところになってしまいます。せっかく残されていた文化、ぜひ利用し、伝えていってほしいと思います。

 お忙しいところ、アンケートにご協力いただいた皆さま、どうもありがとうございました。貴重なご意見をいただきましたことに感謝申し上げます。

「妖怪文化」3 より (2020.3)

「妖怪文化」3

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