タヌキの恩返し 作・絵 高橋郁丸 (安塚の昔話より)
   
むかし むかし
心のやさしい長者さまがおりました
その長者さまの家に初めての孫が生まれ、みんな大喜びでした。
昔は、赤ちゃんが生まれると近所の人を呼んでごちそうを食べました。
この時に、お客さんがたくさん集まるほど縁起がいいということで
長者さまの家では、赤飯をたくさんたいてお祝いをしました


   
赤ちゃんが生まれたと聞いて、近所の人もたくさんやってきました
人の多さに浮かれたのか、ごちそうのにおいをかぎつけたのか
長者さまの屋敷の台所にたぬきが入ってきました
「おや、このタヌキはずうずうしいね!」
お手伝いの人たちが驚いてタヌキを追い出そうとすると、
長者さまはにこにこして
「まあまあ、めでたい日だから、タヌキにも食べてもらおう」
と言いました。
長者さまはタヌキに向かって
「おめでたいごちそうだから、残さずたべなさいよ」と、
言って、ごちそうを食べさせてあげました
タヌキもうれしそうに、大きな尻尾をパタパタさせて食べました。

   
その夜おそく、長者さまの家にどろぼうが入りました
どろぼうは、長者さまの家のにぎわいを見て、
お宝を全部奪おうと思っていました。
長者さまを縛り、包丁をピカピカさせて、
「蔵の鍵を開けないと 殺すぞ」
と脅しました。
長者さまは、おっかない おっかない、と思いながら蔵のカギを開けました。

   
すると、蔵のなかから大きなおすもうさんが出てきました
そして、
「長者さんに悪いことをする人は、お命もらいます」
といって大きな手でどろぼうをつきとばしました
蔵からいきなりおすもうさんが出てきたので、
どろぼうはびっくりして逃げて行きました。
長者さまもびっくりしましたが、
「助けていただいて ありがとうございました」
と、おすもうさんにお礼をいいました


   
すると、おすもうさんは、あっという間にタヌキになって
長者さまに頭をさげながら山に帰っていったんだって

いちごがポーンとさけた
   
 
   2011.2              おしまい

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