灸点法要     三島郡和島村島崎 妙徳寺 平成13年7月1日調査

          

                  参詣者に灸をすえる池津宥允ご住職

当日は朝8時から読経、妙徳寺は真言宗豊山派であるため、ご住職と共に三島郡の同宗派の僧侶による非常に荘厳なお経でした。参詣者は受付(参千円)をすませ、静かにお経を聞いていました。読経の後、9時頃になると祭壇の幕が下ろされ、診察室のような状態になります。ここで、池津ご住職が参詣者から痛いところ、具合の悪いところをお聞きします。

               

ご住職はその診断により、参詣者のツボに筆で印をつけます。ツボをつけてもらった人は脇に控えているお手伝いの僧侶より、灸をたててもらいます。この僧たちは出雲崎など、三島郡内の僧たちで、もぐさをつまんで手馴れた様子で灸を立てていました。このように、ツボを指定するのは鍼灸資格を持っている池津ご住職だけですが、それでも百会のツボには、ご住職自ら灸をすえていました。

                       

*参詣者のお話*

@このお灸はチューブ(中風)に効くといいます。それで、このお寺は「チューブマキ」の人がお参りをするとご利益があるのだそうです。昔はこの日には寺の周りにびっしりと植木屋が出て、三条のお取り越しのようでした。前日に来て、灸点の時間を待ち、本堂で寝ていました。(三条市女性・大正15年生)

A昔、子供を親に預けて灸をたてに来ました。臨時列車が出るので朝、それで帰りました。十人ずつ灸を立てたので、番号が10番の人は100人目、ということでした。(分水町から来た70代女性)

B昔は6月30日の夜、小島屋駅まで臨時列車があった。この行事も夜中の零時から始まった。佐渡から団体で来るなど、団体客も多かった。今回も栃尾から団体の人が来る。昔は前日から何回か、夜中に経を読んでいた。昔ほど人が多くなくなったので、4〜5年ほど前から朝9時から始めることになった。昔は千人位、今は200人ほどではないか。灸点の収入があったので、昔から、檀家は楽だった。受付などの手伝いは檀家の人が交替でしている。(お手伝いの檀家の方のお話)

「妙徳寺縁起」によると、大同2年の住僧賢宥が中風となったとき、本尊脇立薬師如来に100日間の請願し、薬師如来から薬法灸点を伝授されたとあります。賢宥はこれにより中風が完治、灸点行事はそれから始まったといわれています。本堂脇には薬師堂があり、当日は番をしていた方から五香(甘茶)を飲ませていただきました。「これを飲むと灸のご利益が増すんだ」五香をいただいていた方がにっこりと笑っておられました。

*池津御住職、お手伝いの檀家の皆様、大変お世話になりました。 

新潟県民俗学会会員  高橋 郁子