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                                                by こわれまんが屋いくまる

良寛さんは、子どもと遊ぶ、のどかなお坊さんとして有名ですが、本当はずいぶんこわれ者なんです。

     世の中は何にたとえん 山彦の
  こたふる声の 空しきがごと        良寛


「世の中なんて、たとえるとしたら虚しいやまびこ。
 自分の言葉もどこかに消えていくばかりだし」。

…自分が懸命に考え事をしても、全く誰も反応しない。
よくあることですが、ちょっと虚しくなる時ありますよね。

    

事しあれば 事しありとて 君はこず
 事しなき時は おとづれもなし        良寛


「何かあると『忙しい』と言って来てくれないし、
 何にもない時は連絡もくれないし」。


…自分はその程度に扱われているんだ。と憤ってしまいますよね。
「そうだよ」。なんて言われたら…ああ…。

    

うちつてに 折らば折りてむ 梅の花
 わが待つ君は 今宵来なくに        良寛


「折るなら折っちゃえ 梅の花。
 だって今晩待ってた人は 来ないんだもん」


…良寛さんでも、人恋しくて、イラつくときあったのね。

     いざさらば 涙くらべん きりぎりす
 かごとを音には 立ててなかねど        良寛

 
「きりぎりすくん。それなら泣きくらべするかい。
 君と違って、私は黙って泣いているけれどね」。


…「泣かぬ蛍が身をこがす」ということでしょうか。
黙っているほうが傷が深そう…。

    

なげけども 甲斐なきものを 懲りもせで
  またも涙の せき来るはなぞ        良寛

「嘆いたところでどうにもならないのにさ。
懲りもせずに涙が止まらないのはどうしてかな」。


…生理現象ですからね。泣いてばかりの良寛さん。
 涙のカタルシス効果に頼るしかありません。

    

白雲に 道はかくれて 見えずとも
 思いのみこそ しるべなりけれ        良寛

「果てしない道は、白い雲に隠れているけれど、
 進むべき道は、思いが導くんだろうね」。


…良寛さんが慕われるのは、自分の胸のうちを包
み隠さずさらけ出したことなんでしょうね。
 あるがままの自分を、恥じずに堂々と生きる。
それはとても勇敢なことなんだろうな。

   

By 郁丸  2002.10.19(こわれ者の祭典2参加作品)